UTC A-22 ラインアンプの製作             <2015.1001 Start>


タムラのA-7318を使って、柳沢さんのラインアンプの追試やAKI−USBDACのTK−2のトランスアウトの音を聴いてみてトランス
アウトの音もいいものだなぁと思っていました。何より、20th真空管オーディオフェアのサンオーディオのブースで佐久間俊さんのア
ンプの音を聴かせていただいた時に,氏が「トランス結合に始まって、CR結合も試したみたけど結局トランス結合に戻ってきました。
皆さんもトランス結合を試してみてください。」と、いった趣旨の言葉があり、妙に印象に残っていました。

トランス結合、今まで音はよくならないという先入観がありました。それを換えてくれたのがペルケさんの主唱されているトランスによ
るUSBDACの製作でした。また、妙高オーディオ倶楽部の発表会の際に聴くことができた松並さんのトランス結合300Bアンプの音
でした。


 【 適切なトランスを適切な状況で使用したアンプは侮れない!! 】

これが、現在の私の現状です。 そんな折、あるサイトにA-18(UTC)やNP-126(ISO)を使ったラインアンプの製作記事がアップさ
れているのを見ました。A-18は今となってはとても高価ですし、NP-126に至っては入手すら困難です。

幸い、A-8173は現在も何とか入手可能です。柳沢さん製作記事を参考に7856PPでラインアンプを製作して見ました。
結果は、満足!!でした。 NP-126なら音はどう違うのかなぁ・・・とも思いながら、トランス出力のよさを再認識した次第です。折しも
私のコントロールアンプとメインアンプとは5mほど離れて接続されているリスニングルーム環境では600Ωのバランス出力は意味が
あります。

そんな折、バンテックにA-22があることを思いつきました。以前からみてはいたのですが、トランス出力に興味が無かったせいか、
見逃していました。が、このところのトランス見直しで俄然注目した次第です。
30dBm(1W)と容量的には問題ないこのA-22ですが、問題は無くはありません。1:1なのです。つまり、600Ω:600Ωということ。
この問題をどうするか・・・・  出力は600Ωより低くなくてはいけないと考えました。

【A-22について考察】

                   
                              UTCのA-22

A-22は一次500Ω、2次500Ωの1:1のトランスです。そのまま使うと周波数特性はえらくひどいものになると、フロービスさんのHP
にあります。そこで、A-22の周波数特性を測定してみました。案の定、高域にひどいピークがあります。そこで2次側にどのくらいの抵
抗をかませればいいのか、測定してみました。

      
      A-22 2次側無接続                       A-22+2次側620Ω

      
     A-22+2次側1.2kΩ                       A-22+2次側3KΩ

この結果からは 1.2kΩが妥当と判断しました。これでA-22を使う段取りはできました。

 あとはこれに組むバッフーアンプの設計です。そのために、検討することにしました。 参考にしたのは「情熱の真空管」でおなじみの
長さんの記事です。いろいろ調べました。SRPP μSRPP ホワイトSRPP  長さんの文献の1段KNFB+KF回路・・・
要はA-22への入力は600Ωより低くしなければならないということ・・・・

        
        1段KNF+KF                               SRPP
           
        1段KNF+KFホワイトSRPP                  μSRPP

          
                  最初に計画した回路図です

前述のように、どれが適当なのかは文献上はいろいろあって判断できません。私のようにほとんど電子工学の知識が乏しいものにとっ
て、最後に残されて手段は試行錯誤です。

とりあえず、組んでみて実際のデータから結論づけること、これしか手は残っていません。

そこでバラックで組んでみてともかく試してみることにしました。

            
         測定中・・・                 100μFフィルムコンデンサーアウトプット         使った抵抗・コンデンサー類

そして、最終的にたどりついたのが。高gm、低rpによる出力インピーダンス要因でした。具体的には6DJ8によるカソードホロアー回
路でした。

          
   そして、最終的に決定した回路図・・・高gm管が低インピダンスとなるとあって6922(6DJ8)を選択


最終決定の回路図に従って組み上げてみました。
         
        電源部       ハム対策で鉄板を設置     ハム対策用鉄板                 電源部内部
 

組み上げて試聴してみました。 音的には満足です。
ただ、ハムノイズが出ます。PTとU−22が近すぎたようです。間に鉄板を設置してみるとたいぶましになり、通常のレベルでは
何とか聴けます。
しばらくこの状態で工房で聴いていたのですが、何ともこのハムノイズはいただけない。いろいろと検討した結果、PTを換装す
ることにしました。(多分PTの向きを直角に変更すると改善できたのかも知れませんが・・・・) 
候補に挙げたのが、ソフトンさんから発売されているM2-PWTというPTです。
RコアのPTで150V50mA(AC)・8V2A(AC)が取り出せます。使用する真空管が6922(=6DJ8)なのでぴったりです。Rコアトラ
ンスは誘導ハムも少ないというし・・・

早速ソフトンさんから通販でゲット、対応は早かったです。

   
       PT  M2-PWTです

PTの換装に合わせて、整流管はやめてブリッジ整流としました。また、ヒーター回路は7805で定電圧化してCOMにダイオード
2本を直列にかませて(ダイオード1本あたり0.6Vアップ)、都合プラス1.2V増圧することで6.2V を得るようにしました。
 

                           
                 アンプ部上部                           電源部上部
         
             アンプ部内部                             電源部内部

このPTの換装によってハムノイズはほとんどでなくなりました。まぁ、OKでしょう。
と、しばらくこの状態で試聴を繰り返していたのですが、ちょっとヘンです。何気に入力セレクターを切り替えて無入力にしたところ
カンカンとマイクロフォニックノイズがします。また、6922に手を近づけるとハムノイズがします。さては、シールドが無いといけな
いのかとシールドケースを仮置きしてみるとノイズは消えました。これは、シールドケースを付け足しの改造をしないといけないと
覚悟しました。

ここで、思いついたことがあります。それは真空管の差し替えです。早速手持ちにあったTESLA のE88CCに差し替えたところ、ノ
イズはぴたりと無くなりました。マイクロフォニックノイズもありません。が、音は少し変わってしまいました。6922に比べてクリアさ
はあるのですがちょっとベールがかった音です。ただ、30分ほどのエージングでだいぶ改善されましたので、エージングを十分する
と、印象はまた変わってくるのかも知れません。

            
                 M2-PWT換装後の最終回路図


まだXLRレセクタプル端子は調達できていないので取り付けてありません。が、とりあえず、これでOKとしました。しばらく聴いてみ
てみます。